本コーナーではコラムをはじめとして、きもつきを題材としたさまざまな読み物を用意しました。どうぞじっくり、ゆったりお楽しみください。
インタビュー
未来はみなさんの住むこの地域にある!
2014.07.14(月曜日)     きもつき情報局
肝付町川上在住のコンテンポラリーダンサー、JOUさんの友人でベルギーのブリュッセルを拠点に活動するプロのダンサー、タレク・ハラビーさんが先ごろ、肝付町を訪れました。

今年(2014年)5月に行われた東京芸術劇場での公演を終えてから京都や奈良、大阪などを観光した後、JOUさんの招きで当地まで足を延ばしたものです。

パレスチナ系アメリカ人のタレクさんにとっては今回が初来日ということで、日本の田舎を訪れるのも初めての体験です。「日本の田舎のイメージは来日前にはまったくなかった」というタレクさんですが、肝付町の豊かな自然や健康的な食事、そして人懐っこい地域住民との触れ合いを存分に楽しんだようです。

そのタレクさんに肝付町の印象を聞いてみました。

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古墳群のある塚崎で古代パワーに触れるタレクさん

―今回があなたにとって初めての日本訪問ということですが、これまでの全体的な印象を教えてください。

いろいろな面で何から何までうれしい驚きがありました。

一方ではいくつかの都市を訪れましたが、そこは巨大で多くの人やたくさんのエネルギー、そして騒音に満ちあふれ、さまざまなことが同時に起きています。

もう一方で、それとは対極の日本の南にあるこの鹿児島にやってきました。ここは本当に静かで小さな集落があり、人も少なく美しい自然があります。

日本滞在中は都市と農村の両極端を経験することができて本当に幸運だったと思います。

―日本に来る前のイメージにはどんなものがありましたか。

最大のイメージはたいていの場合、日本を訪れた友人が話してくれたことを基にしていました。彼らにとって日本は文化的に異質なところであって、必ずしも理解はできないけれども心を引きつけられたところです。

私はそれとはかなり違った経験をしてきました。たぶんそれは私が多くのアジア系の人とともに育ち、中東でも育ってきたということが関係しているのでしょう。日本には似たところがあると感じますし、日本人や習慣や人々の交わり方などについて、文化的にたやすく理解できるのだと思います。

思っていたほどの異質さや距離を感じることはありませんでした。

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樹齢1300年の塚崎の大クスと対面

―日本のイメージということでいけば、ほとんどの外国人は大都市である東京のイメージか日本の文化と伝統の象徴である京都のイメージをもっているのではないでしょうか。ところが日本の田舎のイメージというのは外国人訪問客の頭の中にはないように思います。

完全に抜け落ちていますね。私も日本に来る前は日本の田舎については、何も知りませんでしたし、日本の田舎を旅した人も身近にはいませんでした。日本の田畑や山そして集落などを訪れたことのある人はいませんでした。ですから海外から日本を訪れる人にとって、田舎は確かに未開拓で未知なる日本の一部だと感じます。

―訪れてみてどうでしたか。

気に入りました。すっかり気に入りました。たぶんそれは、私が日頃は田舎を訪れる機会があまりないからでしょうね。緑にあふれ隣に住む農家の人が自ら食べ物を栽培し、とりたてのものを食べられるということは、私の暮らしの中にはないものですから、ここに来られてうれしかったです。本当に美しいところですから、日本の田舎にぜひ行ってみてとみんなに伝えたいですね。

―肝付町ではどのようなところを見てまわったのですか。

これまで多くの学校を訪問してアート、特にダンスについて話をしてきました。プロのアーティストであるということやそれが職業としてなりたつという考え方などを伝えてきました。
 
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国見小学校では子どもたちといっしょにダンス

そして多少の史跡のほかお年寄りが多く住む集落もいくつか訪れました。そのほか、学校の生徒と訪れた集落(大浦)もあります。そこでは、ある意味孤立している地域のお年寄りと大切な交流をしてきました。

単にお年寄りに元気をあげるという意味だけではなく、彼らもまた若い世代に何かを返すという意味で大切な交流です。

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 大浦集落のお年寄りと子どもたちの交流会では上半身を使った体操を披露

若い世代は故郷を離れ大学に行き、経済的に恵まれた仕事につくほうが大事だと考えているかもしれません。でも彼らは故郷にも長い歴史に支えられたとても豊かなものがあることに気づいていません。

そうした知識や情報をここにまだ住んでいる人たちが若い世代に伝えることができるのです。そうすることがとても大事だと思います。でなければ情報が失われてしまうからです

―あなたは大浦を訪れた際に次のように発言しました。「未来はあなたがたの地域や生き方にある」と。あれはどういう意味ですか。

言いたかったのは、近い将来、ものごとが変化するだろうということです。人々は都市生活のストレスや汚染から離れ、田舎に戻りたいと思い始めていると思います。田舎で土に生き、食べ物を自ら育て、穏やかで静かな暮らしをしたくなるということです。

そうした暮らしのほうが健康にもいいですしね。これまでのような都市に住むほうが刺激的という時代は、これから過去のものになっていくと思います。人々は都市で暮らすことが個人や社会全体にもたらすマイナスの影響に気づき始めていると思います。

そのような変化が起きてきていると思うし、私自身 そうなることを望んでいます。私が暮らすヨーロッパでも芸術家の仲間の多くが都市を離れ始めています。都市は家賃が高くて人も多すぎて、自分のやりたいことをする時間がないからです。生きるため、食べるため、家賃を払うだけのために稼がないといけないからです。

ですから彼らはこれまでとは異なる状況、異なる生活パターンに身を置こうとしています。自らがやりたくて必要なクリエイティブな仕事をしながら生活もできるといった状況に、です

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 海に近い有明地区を散策するタレクさん

―あなたの今の発言はこの町に住む人々にとって非常に元気づけられるものです。地元の人の多くは自分たちの住む地域が遅れたところだと思い、外からやってきた人に「何の価値もないところへようこそ」と言いがちです。しかしあなたから見て、それは変わっていくということですね。

そうだと私は思います。こうした田舎や集落には多くの価値があると思います。

人というものは忘れっぽいものですが、私たちはみなこれまで何世紀にもわたって進化してきた歴史や文化のたまものです。また、私たちの中には人類が長い年月をかけて学んだ知識や情報が入っています。

それは古い世代の人たちだけではなく、私たちのからだの中にもあるものです。そうした知識を活用することは私たちの責任だろうと思います。その知識がどういうものであり、なぜそういう進化を遂げたのかを理解するためにです。

私自身の家族の歴史を考えてみますと、父方はパレスチナ人です。パレスチナがイスラエルになったとき、父の一家は故郷を離れなければなりませんでした。ですから、私の家族は(故郷との)文化的なつながりを失いつつあり、私自身、父やその前の世代がもっていたものを失い始めています。生まれた土地とのつながりが完全に断たれてしまったからです。

土地とのつながりが断たれてしまえば、文化や言語や食とのつながりが断たれてしまいます。そうしたつながりが次第に失われていき、人々が画一的で退屈になってしまうのを見るのは、ある意味おそろしいですね。

―つまり、人々がルーツを失いつつあるということでしょうか。

ルーツだけではなく、ものごとに対する感受性や異なる考え方をする能力など、たくさんのものを失っています。私たちが思っている以上に多くを失っていると思います。だからこそ、人が生き続けるうえで既知の領域を超えたところにある新しい道を探し始めることも大事なのだと思います。

おそらく、私が友人のJOUさんとここでやってきたこと、つまり学校を訪れて生徒にアートやダンスのことについて話をすることは、多少なりとも私たちに課せられた使命なのでしょう。

そのことは、異なるアイデアやものごとのやり方を、そういった教育が一般的ではない環境において紹介するためでもあります。

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国の有形文化財に登録されている川上中学校(休校中)の校庭にて

―同時に、私たちの故郷の歴史や伝統を次の世代に伝えるということも大事ですよね。ここには豊かな自然や歴史、たくさんの祭りなどがあるわけですから。私たちは本当に恵まれています。

とても恵まれています。私自身、ここにいられるだけで恵まれていると感じます。短い滞在ではありましたが、ここにあるものを体験できただけではなく、ここで起こりうることを想像できて本当に幸運でした。

基本的に、ここにあるのはまっさらな可能性のリストです。さまざまな可能性がここにはあります。その可能性を実現するためには、ここに暮らす人たちがみんなで協力しなければなりません。人々が集い、ものごとをなし遂げていけば、その経験を通じて力や知識、支援がさらに大きくなっていくことでしょう。

―残念ながら、この地域はこれまで観光マップからは外れていました。観光客を呼び込むための広報宣伝活動が希薄でした。しかしながら、もしそれを正しいやり方でやったとしたら、外国人を含めて外部から人が訪れ、この地域にあるものを楽しんでくれると思いますか。

そうだと思います。その場合、ここにあるものを守るという意味で、頭を使った方法でプロモートする必要があると思います。それを搾取したり、金儲けの手段としたり、ここにある美しい自然や土地を壊してしまうようなものを建てたりしてはダメです。

人は休暇で自然や土地と触れ合いたいわけです。そもそも日常を離れ、からだを休め、英気を養い、からだを動かしたり、ものごとを考えなおしたり、一息ついたりするために休暇をとるわけですからね。

その意味で、ここにはそうした体験を求めてやってくる人たちに向けた観光を立ち上げる可能性が確実にあると思います。

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大浦での交流会では参加者といっしょに記念撮影

―すると、あなたはここでの滞在を満喫できたということですね。

まったくそうです。しかも、ここに来てからたっぷり寝ているのですが、それは私にとって非常にいいことです。

また、ここでは本当にいいものを食べています。とても新鮮でオーガニック、そしてさまざまな味と風味のあるもので、欧州で暮らす私の日常生活ではあまり口にすることのない食事です。ということで、ここでの滞在を本当に楽しんでいます。ここにある山や森、海岸や集落などすべてが本当に美しいです。

―だとしたら、あなたの友人にこの場所のことをぜひ宣伝してください。

ええ、そうしますとも。もうすでにそうしていますし、これからも宣伝を続けていきます。

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肝付町の地域おこし協力隊メンバー5名によるブログです。