本コーナーではコラムをはじめとして、きもつきを題材としたさまざまな読み物を用意しました。どうぞじっくり、ゆったりお楽しみください。
コラム(アーカイブ)
新しい文明を築く時を迎えて
2014.04.03(木曜日)    中川十郎(なかがわ じゅうろう)
日本ビジネスインテリジェンス協会の顧問として長年、御指導いただいている村田光平・元スイス大使、地球倫理システム学会常務理事は早くから原発の危険性を指摘し、「原発村」の問題について大使在任中より精力的に多くの著作を通じて世界に問題提起をされてきた。
 
福島原発事故は地球倫理上も問題だとして、日本のみならず国際的に「原発即時停止」運動を精力的に展開され、オバマ大統領や国連事務総長など世界の指導者にユニークな「女性文化」の観点からの原発即廃止を訴えておられ、その活動は世界から注目されている。
 
原発再稼働第一号の「汚名」をきせられる可能性のある「川内原発」を有する鹿児島にも有志に招かれ、原発反対の講演は好評を博した。
 
本年(2014年)3月には、ニューヨークで開催されたユネスコクラブ世界連盟国際会議で原発反対を倫理上も、女性文化の観点からも強く訴えられ、3月11日を国連の「倫理の日」として定めるべきであるとして熱弁を振るわれた。

以下は世界各国の参加者に深い感銘を与えた村田大使の英語演説の日本語訳である。大使のご承諾を得て、「きもつき情報局」に転載していただく次第である。


新しい文明を築く時を迎えて

はじめに

世界が直面する危機を前にして、古代ギリシャのプラトンが「王さまは哲学者になるべきである。さもなければ人類の不幸は無くならない」と述べていることが想起されます。

今日、哲学の欠如により世界は理想を失い、民主主義の究極の目標たるべき「最大多数の最大幸福」は忘れられております。現在の物質主義は貪欲の上に築かれ、人類と地球の将来を脅かすに至っています。ますます頻度と破壊度を増す自然災害及び原発がもたらした地球規模の安全保障問題化はまさにその明白な傍証です。

マハトマ・ガンジーは「地球は各人の生存のために必要とするものは満たし得るが各人の貪欲は満たし得ない」と述べておりますが、これはグローバリゼーションが逢着する諸問題の背景を説明するものです。

GDP経済学

いわゆるGDP経済学は、数量化出来ないあるいは貨幣に換算できないすべての重要な価値を無視します。例えば文化、伝統、家族、社会正義など枚挙にいとまがありません。

そしてGDP経済学は天然資源を、保存を必要とする「資本」ではなく「所得」と見做すという大きな過ちを犯しており、そのため経済成長は深刻に環境を破壊しております。

文明の危機

浸透した経済至上主義は現世代の倫理の喪失をもたらし、その結果、現世代は利己主義によって未来の世代を犠牲にし、天然資源を濫用して繁栄を築いています。この倫理の欠如は全世界を覆っており、責任感及び正義感の欠如と相俟って人類と地球の将来を憂慮させるに至っております。この倫理観、責任感及び正義感の「三カン欠如」は日本病、そして世界病を生んでいるのです。

人類が直面する危機の真因は、世界中にあまねく広がった倫理の欠如です。未来の世代に属する天然資源を乱用して枯渇させ、永久に有害な廃棄物と膨大な負債を後世に残すことは、倫理の根本に反します。自然と世界の資源はもたらす結果についてはお構いなしに開発されているのです。

現在人類が直面する危機は文明の危機です。現在の文明は、「父性文化もしくは支配に立脚する力の文明」といえるものですが、これを命に至上の価値を与える「母性文化もしくは協力に立脚した和の文明」に転換する必要があります。

新しい文明

地球倫理の確立なくしては、未来の世代に美しい地球を残せるような人類の将来の文明は築けません。このような認識から、倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する新しい文明の創設に取り組むべき時がきたと考えます。この新しい文明は現在の物質中心のものから精神中心のものに移行しなければなりません。

フランスの作家で政治家でもあったアンドレ・マルローは「21世紀は文化的、精神的な世紀となろう。さもなければ、存在しなくなるであろう」と述べております。

ここで「少欲知足」の重要性が想起されます。この概念は東洋の釈迦牟尼及び老子により初めて説かれたものでありますが、西洋でもこの考えは古代ギリシャのストア派、イタリアのミケランジェロ及び『スモール・イズ・ビューティフル』の著者、E.F.シューマッハーも主張しており、普遍性を有します。

「少欲知足」は、欲望を減らすことにより幸福を極大化することを可能にするもので、現在見られる消費の極大化の追求と対照的と言えます。

これは幸福=富÷欲望であるとする釈迦牟尼の教えと軌を一にするものです。この数式では欲望は分母であり、富は分子です。

では、物質主義から精神主義へ、「貪欲」から「少欲、知足」へ、そして利己主義から連帯へと三つの方向転換を必要とする新しい文明の創設に我々はどのように取り組むべきなのでしょうか?

三つの重要な課題に我々は直面しております。すなわち「地球倫理の確立」、「真の指導者の養成」及び「経済至上主義に対する文化の逆襲」です。

地球倫理

地球倫理の確立に関しては、人間を超えた存在或いは天の摂理を信ずる心が、宗教を持つ者と宗教を持たない者の共通の基盤になり得ます。主要宗教の共通の倫理規範と市民社会の良心を統合することにより地球倫理の確立の有効な基礎を築くことが可能となりましょう。

天地の摂理は 天の摂理(providence) に代わる私の造語です。哲学により究明される歴史の法則を意味します。多くの例示が可能です。「盛者必衰の理」、「絶対的権力は絶対に腐敗する」、「いつまでもすべての人をだますことは不可能である」、「善き思い天が助ける」などです。天地の摂理は多くの文明の興亡に立ち会い、時の試練に耐えております。

グローバル・ブレイン

新しい文明を先導する「グローバル・ブレイン」となりうる真の指導者の養成については、思いやりと感性の重要性が強調されなければなりません。

有名なチャーリー・チャップリンの映画「独裁者」(1940年)の中の次の言葉は誠に印象的です。「我々は考え過ぎて感じることが余りにも少ない。我々が必要とするのは機械よりも人間愛であり、利口さよりも優しさと思いやりである。」

真の指導者は人類と地球の将来に責任を持たなければなりません。知性のみならず感性を備えたこのような指導者を社会のすべての分野で育てることが肝要です。「グローバル・ブレイン」はこのような指導者を意味する私の造語です。

市民社会の役割は益々重要となります。すべての分野にヴィジョンと理想を備えた指導者を養成することは緊急の課題です。このようなグローバル・ブレインは人類と地球の将来に思いを致すことができるのです。

文化交流

最後に経済至上主義に対する文化の逆襲を取り上げたいと思います。この経済至上主義の概念は仕事場での「リストラ」の例にも見られるように「人間の排除」をもたらしております。効率の追求の行き過ぎは人間の尊厳を損ない無視するものであります。

多様な文化と文明、そしてさまざまな宗教の共存は世界にとって大きな挑戦的課題となっております。文化交流は表面化する紛争の解決の鍵になり得えます。

人間の幸福は文化無しには考えられません。文化は基本的な倫理価値を増進させます。文化交流は連帯を築くことに貢献できます。人間を排除する傾向が支配的な状況の下で、人間性を回復するための文化の逆襲が痛切に必要とされております。

父性文化と母性文化

この過程において考慮すべき重要な点があります。それは父性文化と母性文化の間に存在する顕著な相違です。父性文化は「競争、対立、力」に価値を置くのに対し、母性文化は「和、協力、弱者に対する思いやり」を重視するのです。

今日の世界においては、富めるものと貧しいものとの格差が益々拡大しつつあり、父性文化が支配的のようです。二つの文化の間に均衡と融合を図る必要性が益々認識されるに至っております。イスラム社会に於いても女性の地位向上の動きがみられます。父性文化は破局を招くことを歴史は示しております。

母性文化そのものでなくとも母性的思考は世界平和の維持に不可欠です。

2008年8月20日、北京オリンピックの開幕式に於いて、2008名が繰り出す情景の一つに「和」の文字が描かれたことに深い感銘を覚えました。「母性文化」はアジアにおいて広く共有されるものであり、日本で最も守られてきたことが想起されたからです。

本来日本は和と連帯を特徴とする母性文化を有しておりました。明治維新後、軍国主義という形で競争と対立を特徴とする父性文化が導入されました。歴史は父性文化が最終的には破局に通ずるものであることを示しております。

福島事故は終戦後導入された経済至上主義という別の形態の父性文化が招いたものです。父性文化は福島という破局を生んだのです。和の母性文化は力の父性文化の治療薬です。

結語

日本は民事、軍事を問わない完全な核廃絶の実現を訴える歴史的使命を有するに至りました。

核エネルギーなしの長期にわたる人類と地球の安全のために、我々はライフスタイルに関して短期間の犠牲を払う覚悟が必要です。自然・再生可能エネルギーが倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する母性文明の基盤となり得ます。

このような考えから、ユネスコクラブ世界連盟(WFUCA)が呼びかけている国連倫理サミットの開催と地球倫理国際日の創設に賛同いたします。

同サミットはオバマ大統領の「核兵器のない世界」のヴィジョンへの道を切り開くものと確信いたします。潘基文国連事務総長は2013年3月2日付の私宛書簡で加盟国が国連総会に上程するならば喜んで同サミットの開催を支持すると述べておられます。

地球倫理、母性文明及び真の核廃絶という三位一体の目標を追求しなければなりません。困難に満ちた厳しい現実にかんがみれば楽観できません。しかしながら上述した人力を超越した天地の摂理こそ、人類と地球の将来に我々が希望を抱くことを可能にしているのです。

※ユネスコクラブ世界連盟国際会議(2014年3月ニューヨークにて開催)におけるスピーチ(邦訳)

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