本コーナーではコラムをはじめとして、きもつきを題材としたさまざまな読み物を用意しました。どうぞじっくり、ゆったりお楽しみください。
コラム(アーカイブ)
TPPの背景
2013.12.10(火曜日)    中川十郎(なかがわ じゅうろう)
2011年以来3年間10回以上にわたりBIS論壇(注)でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)反対の論陣を張り、TPPの問題点を論じてきた。

(注:中川先生が会長を務める日本ビジネスインテリジェンス協会のメンバー間で行われているバーチャルな意見発表の場)

そこでもたびたび指摘してきたとおり、問題点山積のTPPだが、TPP交渉を推進し、リードしている米国は交渉の年内妥結をめざし、閣僚会議をシンガポールで12月7日から10日まで開催する。(注:10日付報道によると、年内妥結は断念。関連記事はこちら

12月1日には米通商代表のフロマン氏が来日。続いて、米バイデン副大統領も12月2日来日し、3日午前に麻生副総理、夕方、安倍首相と会談した。尖閣問題に合わせ、TPPについても根回しし、農産物も含めてすべての品目の関税ゼロを要求した。

またTPPと並行して協議中の日米2国間協議では日本車の対米輸出が急増した場合、米政府が輸入を一時的に停止できる、いわゆるセーフガード条項の盛り込みなど、米国の自動車業界の要求を日本政府に突き付けた。がん保険、混合医療の承認など米多国籍企業の企業益の押し込みが露骨になりつつある。

オバマ政権は2014年11月の中間選挙を控え、経済面での実績をつけるため、強引にTPPの年内合意妥結をめざし焦っている。米国の言いなりになりつつある安倍首相はバイデン副大統領との会談でも「日米が協力して諸懸案をただちに解決し、年内妥結へ道筋をつけたい」と米国に迎合。バイデン副大統領と安倍首相は「TPP交渉の難航を認めつつ、日米連携をテコに妥結を目指すと改めて表明した」と、12月4日付の日本経済新聞記事は報じた。

TPP交渉では圧倒的な経済規模を誇る日米が折り合うことが必要で、交渉全体にも大きな影響を与えるので、7日からのシンガポールでのTPP参加国閣僚会議で道筋をつけるため、オバマ政権は安倍政権に最後の根回しをしている。

そのためには尖閣をはじめとする防空圏などでの中国牽制のための米国との交渉材料としてもTPPが活用される懸念が大きい。多くの国民の反対にもかかわらず、今国会で成立した悪法「特定秘密保護法」などとも関連し、安倍政権のTPP交渉の経緯については徹底した注視と監視が必要だ。

12月8日には「これでいいのかTPP」大行動が日比谷・野外音楽堂であり、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」、「TPP参加交渉から即時脱退を求める大学教員の会」、「主婦連合会」など全国の65の団体が参加した。問題点も多く、日本の国益を毀損する、これほど反対の多い悪法を米国に迎合し、12月中に急いで交渉妥結を目指す安倍政権は「特定秘密保護法」と併せて、危険な右翼一党独裁的形相を呈しつつある。われわれ国民は安倍政権の動向を十分監視、注意すべきである。

TPPが日本の国益を毀損することは明らかで、11月17日に開催の国際融合医療協会年次大会で「TPPの医療介護保険及び関連産業に与える影響」を提出された広瀬輝夫・元NY医科大学教授(日本ビジネスインテリジェンス協会名誉顧問)の論文でもTPPが日本の医療や、国民皆保険制度に与える悪影響の危険性を指摘されている。

またシンガポール、バリ、リマなどのTPP交渉に米国NPO名義で参加され、TPP反対運動に挺身されているアジア太平洋資料センター・内田聖子事務局長や、著書『貧困大国アメリカ』(岩波新書)でも有名なジャーナリスト、堤末果さんも、「米独占禁止法を骨抜きにし、4社で全米養鶏業界の60%を支配、98%の生産者を傘下に置き、日本をはじめとする畜産を独占しようとする米多国籍企業が『食』を他国への武器にする自由貿易政策へ舵を切っている。TPPは米国巨大企業モデルの世界展開にほかならない」、「たとえばイラクでは米国国際開発庁(USAID)がイラク農民に米国製小麦のGM(遺伝子組み換え)種子と農薬、農機具を提供し、イラクの農家は大規模な農業ビジネスと遺伝子組み換え種子栽培へと舵を切らざるを得ない状態に追い込まれた。南米のアルゼンチンやハイチでも食における乗っ取りが行われた。NAFTA(北米自由貿易協定)参加国のメキシコでも米国の多国籍企業がトウモロコシや豆の遺伝子組み換え種子を商品化し、特許を取得し、食料自給国であったメキシコを飢餓国家に転落させた」と、長い米国滞在経験をもとに警告しておられる。The Big Issue Japan-11月1日号 11ページ)
 
bookcover_hinkontaikoku.jpg
『ルポ 貧困大国アメリカ』 堤末果著

このような数々の問題点のあるTPPに遅れて7月に交渉参加した安倍政権がベトナム、マレーシアなどの参加国がISDS(国家賠償請求法)や、国営企業の購買自由化などに反対しているのに、今月の交渉妥結を目指し、米国に協力するなど、TPP参加のアジア諸国や日本の国益を毀損し、米国に迎合することはきわめて危険といわざるを得ない。

日本はまず、2015年に完成をめざしASEAN諸国が努力中のAFTA(アセアン自由貿易圏)、目下交渉中の日中韓FTA(自由貿易協定)、2015年の妥結をめざし交渉中のRCEP(東アジア包括的経済連携―ASEAN10カ国+日中韓+印、豪州、ニュージーランド)のアジア中心の自由貿易協定締結に全力を注ぐことこそ先決である。

そのあとでTPPを目指しても遅すぎるということはないであろう。

 
20131210charts.jpg
The Big Issue Japan-11月1日号より

10月から11月にかけて興味ある日米シンポジウムが開催されたので参加した。一つは10月29日開催の「新時代の日米同盟~未来への助走」、ほかは10月30日開催の「世界との対話~価値観外交の可能性」、および11月18日開催の「米国の対外姿勢の変化と日米関係への影響」、11月25日の「東アジアのサイバーセキュリテイと日米同盟」であった。

10月29日のシンポジウムには日本の外交、国防、経済関係を裏で操っているといわれる米戦略国際問題研究所(CSIS)のジャパンハンドラーのリチャード・アーミテージ(元米国務副長官)、カート・キャンベル(前米国国務次官補~東アジア太平洋担当)、マイケル・グリーン(元米国家安全保障担当大統領特別補佐官兼アジア上席部長、CSIS上級副所長)、ジョン・ハムレ(元米国防副長官、CSIS所長)、ジョセフ・ナイ(ハーバード大学特別功労教授)、ジェームス・スタインバーグ(前米国務副長官、シラキュース大学行政大学院長)、日本側からは石破茂・自民党幹事長、野田聖子・自民党総務会長、岩屋毅・自民党安全保障調査会長、長島昭久・元防衛副大臣が出席、主催は日本経済新聞社、CSISであった。

これらのシンポジウムではほとんどのパネリストがTPPに賛成論を唱え、TPP仕掛け人の米側参加者がオバマ政権の米国益と米多国籍企業の企業益を代弁しTPPの早期締結を声高に唱えていたのが印象的であった。日本は日本の国益を守ることこそ先決である。

関連する記事

関連する記事
11月2日と3日の2日間にわたり福井で開かれた国際アジア共同

期待の新型ロケット「イプシロン」が2度の延期を乗り越えて、宇

肝付町(旧高山町)出身で東京在住の中村敏矢氏が3か月に1回の

英語版ポータルサイトです
ポータルサイトを運営しているNPO法人のホームページです。

きもつき情報局で撮影・制作した動画をお楽しみください。
2016.08.08
月曜日
肝付産の食材を扱う直売所が8月11日、新富地区の商店街にオープンします。 詳しくはこちらへ。
2015.05.14
木曜日
高山グラウンドゴルフ協会では、新規メンバーを随時募集しています。 詳しくはこちらへ。
   
※このランキングは過去1か月以内のものです                       

肝付町の地域おこし協力隊メンバー5名によるブログです。