本コーナーではコラムをはじめとして、きもつきを題材としたさまざまな読み物を用意しました。どうぞじっくり、ゆったりお楽しみください。
コラム(アーカイブ)
福井で回想する岡倉天心の「アジアは一つ」の理想
2013.11.15(金曜日)    中川十郎(なかがわ じゅうろう)
11月2日と3日の2日間にわたり福井で開かれた国際アジア共同体学会第7回全国大会において、同学会の副理事長を仰せつかっているところより、総合司会を務めることになった。

福井といえば、岡倉天心の父、覚(勘)右衛門が福井藩出身で、福井藩が横浜に開いた商館「石川屋」で貿易を営んでいたので、天心は横浜で生まれた。
 
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岡倉天心(茨城県天心記念五浦美術館蔵)

父の覚(勘)右衛門は教育熱心で、天心が6歳の時に宣教師ジェームス・バラの私塾で英語を学ばせた。さらに長延寺の住職の下で漢学の手ほどきも受けさせた。天心の英語は欧米人も驚くほどの抜群のNativeな英語力であった。昨今話題になっている日本のグローバル人材のはしりでもある。

13歳で東京外国語学校(現東京外国語大学)英語科に入学。さらに15歳で1期生として東京大学に入学した。父親の早期教育の方針で英語や漢学に関して神童ぶりを発揮していたことがうかがえる。ちなみに、同期には井上哲次郎(哲学者)、牧野伸顕(政治家)、医学部に森林太郎(森鴎外)などがいた。

天心はその後、東京芸術大学の前身、東京美術学校の校長なども歴任し、日本美術の振興に力をそそいだほか、有名な米ボストン美術館の東洋部長としても活躍した。天心が英語で著わした『東洋の理想』『東洋の目覚め』『日本の目覚め』『茶の本』は評判を呼び、フランス語、ドイツ語など多くの外国語にも翻訳され、世界的なベストセラーとなった。

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英語版の『茶の本』

『東洋の理想』の"Asia is One"(「アジアはひとつ」、「アジアは一体」)の精神は当時のアジアの指導者、知識人に大きな影響を与えた。天心はアジアの範囲にアラブ、さらにインド以東、中国、日本を含めており、100年以上も前にすでにアジア共同体概念の創始者でもあった。その慧眼には感嘆するほかない。

天心はインドや中国も訪問し、ヒマラヤをはさんで、インド哲学の個人主義と中国儒教の共同体主義、文化など東洋の精神文明に傾倒した。とくにアジアで最初のノーベル文学賞を受賞したインドのタゴールとは生涯の親交を結んだ。

インド、中国という二大アジア文明が生み出した諸要素を維持、保持し、統合すること――それこそがまさにアジア文明の究極の理想である「不二一元の理想を実現するものだ」と天心は認識していた。彼は和漢、英語に通じたアジアを代表する第一級の国際人、文化人でもあった。

さて、本年2013年は天心の生誕150周年、没後100年となるところより、国際アジア共同体学会を天心ゆかりの福井で開催し、アジア共同体構築に関し、中国、ロシアなど内外の研究者、学者、経営者などが一堂に会し、2日間にわたり白熱した討論をしたことは時節柄極めて有益であった。

学会期間中は福井県立美術館主催で開催されていた「空前絶後の岡倉天心展」を見学、大観、春草など近代日本画の名品が一堂に展示され、圧巻であった。また天心の恩師のフェノロサが愛蔵した橋本雅邦(はしもと がほう)の名画「毘沙門天(びしゃもんてん)図」、狩野芳崖(かのう ほうがい)の傑作「飛龍戯児図」(ともにフィラデルフィア美術館蔵)が初めて日本に里帰りし、展示されていたのには感激した。

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空前絶後の岡倉天心展のパンフレット

「東洋と西洋とは岡倉覚三において相い合したのである」(W.S.ヒゲロウ&J.E.ロッジ)「もし我が国が文明国となるのに血なまぐさい戦争の栄光によらねばならぬなら、我々は甘んじて野蛮人でいよう」(岡倉天心『茶の本』)などの有名な言葉が会場に掲げられており、深い感銘を受けた。岡倉天心が並はずれた国際的な教養を基にした我が国を代表する第一級の文化人であることを改めて認識した。

この機会に松平春獄でも有名な名勝「養浩館(ようこうかん)庭園」(旧御泉水屋敷)も訪問。すばらしい日本庭園と茶室など日本文化の神髄を満喫した。

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養浩館庭園(写真提供:公益社団法人福井県観光連盟)

また、隣接する福井市立郷土歴史博物館では福井の弥生時代以降の歴史と文化の伝統に強い印象を受けた。

「食はその土地の文化を反映する」というが、福井の食文化の美味の食事と名酒も二晩にわたり堪能した。福井の人々が非常に親切で、よき時代の日本の文化と伝統が残っていることを実感した。県、市とも観光振興にも熱心で、ホテルにも地元の観光紹介のパンフレットがふんだんにおいてあり、この県は将来大いに発展するものと実感した。

100年も前に岡倉天心は「アジアは一つ」「アジアは一体」と喝破し、アジアの協力、統合、一体化を唱えた。いま、まさしく天心の精神を受け継ぎ、日本が中心となり、21世紀に最大の発展をするアジアでの共同体の構築にまい進することが日本の責務である。 
 
そのためには米国の国益、多国籍企業、金融資本の企業益を目指し、米国が主導するTPP(環太平洋連携協定)よりも日本の足元のアジアに力点を置いたASEAN+3(東南アジア10カ国+日、中、韓)さらにASEAN+6(アセアン+日、中、韓+インド、豪州、ニュージーランド)のRCEP(東アジア地域包括的経済連携)構築に注力することこそ日本の国益上先決である。

岡倉天心の「アジアは一つ」「アジアは一体」の意を体し、微力ながらアジア共同体の構築に尽力したいと心に誓った今回の有意義な福井大会であった。

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