本コーナーではコラムをはじめとして、きもつきを題材としたさまざまな読み物を用意しました。どうぞじっくり、ゆったりお楽しみください。
コラム(アーカイブ)
小さな「あ!」がつくる地域の未来
2013.09.25(水曜日)     きもつき情報局
4市町をつないで昨年開催された「おおすみ夏の芸術祭2012」から1年。今年は「おおすみ-かごしま芸術祭2013」と題して、鹿児島県内9市町をつないで開催されました。

昨年のパンフレットを東京や海外の人に見せた時、鹿屋のことを「しかや」、肝属を「かんぞく」と読んだり、肝付は「...」、志布志も「...」、といった反応で盛り上がり、「こんなに面白くて珍しい地名がそろいもそろっているのは初めて見た!」と話題の中心になり、地名だけでも大隅半島のよい宣伝になることを発見しました。

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「おおすみ-かごしま芸術祭2013」の一場面(肝付町・内之浦漁港)

「今あるモノを花ひらかせよう」「場をひらき、人をつなぐ」「おかえり、ただいまの関係を育む」という基本理念に賛同して下さった方々のご協力とご支援により実現したイベントでしたが、県外に情報が出た時の反応を見て、「これは、アートという切り口での地域アピールになる!」と実感しました。地域アピールを個々の市町や集落が単独でするのではなく、広域でイメージづくりをしていくこと――それが大事なことを知りました。

広域ネットワークづくりのきっかけに

たとえば、静岡県にはたくさんの市町がありますが、「静岡茶」という銘柄でくくられることは周知の通りです。青森のニンニクにしてもしかり。鹿児島を広域でつなぐこの芸術祭は、名産品の創出にまではまだ至っていませんが、まずは大きな「大隅半島」「鹿児島県」という領域全体でのアピールをしていけるきっかけになるのではないか、と思います。

また、こうした行政枠を越えたイベントを重ね、共同作業の実績をつくっていくことで、広域での連携のノウハウやネットワークが積み重なっていきます。たとえ今すぐに何かが起こらなくても、情報や人の交流ネットワークを構築していくことは、必ずや次世代の新しい町の基盤を強化してくれるはずです。

芸術祭で積み重ねていく小さな、しかし広域ネットワークの未来には、「今の子どもたちが成人した頃、自分たちで考え、創出した事業を、国内外の人材と情報のネットワークを駆使して軌道に乗せることができる」という環境をもたらしてくれるであろう、という期待があります。

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今年の芸術祭に参加したゲストアーティストのアンドレさんが描いた内之浦の風景

テクノロジーの進化と変わらないもの

テクノロジーは日々進化しています。今や当たり前に使われているインターネットやパソコン、モバイル携帯などの技術も、20年ほど前までは、それほど普及していませんでした。

それがこの先10年後、20年後にもまだ今の形であるかというと、おそらく、ないでしょう。テクノロジーは、もっと便利に、もっと使いやすい形へと変化するのが常ですから、5年もしたらパソコンの能力も段違いに変化していることが考えられます。

常に変わり続ける技術を追いかけ、使いこなすことも大切でしょうが、常に変わらない自分自身の意識と身体感覚が必要とされる「人と人のつながり」「情報を読み取り、活用する能力」を、どのような未来が来たとしても、どのような状況においても「活かせる人材づくり」をしていく必要性を感じます。

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永野和行町長(後列の右から2人目)を表敬訪問した際に撮影した記念写真

「おおすみ-かごしま芸術祭」の本当の意図は、そこにあります。私自身がダンサーでもあり、実際に踊る場面も芸術祭のプログラムに出てきますので、「自分の踊る場所が欲しいからやっているのだろう」「自分がやりたいことだけやっているのではないか」という厳しい意見をくださる方もいます。

私にとっての踊りは、「人や場をつなげるための通訳や接着剤としての言語」です。つないだ人たちが同じように均一化してしまうのではなく、感覚を共有しながらも一人ひとりの個性を再認識できるような時間がつくれたら、大成功です。

いつか訪れるだろう気づきの瞬間のために

私にとってダンスは、その踊りだす身体で空間や意識をひらき、何か新しい発見や感覚が生まれる時間をつくるための道具です。こういう感覚をもつダンサーは、世界でもあまり見たことがありません。また、その結果は、明解でわかりやすい結果がでるわけでは決してないことも十分承知しています。

「なんじゃ、こりゃ?」で終わってしまうかもしれないし、「??」で忘れさられてしまうかもしれない。しかし、自分自身がそうであったように、その時は全く理解できなかったこと、オモシロイと思わなかったことが、何年か経った時、思いもかけなかったタイミングで「あ!」と腑に落ちる瞬間がやってきたりすることも事実です。

「あ!」が一生やってこない人ももちろん、いることでしょう。「あ!」がやってきた時には、必ず何かが変わります。目からウロコ、という感覚だったり、滝から川に飛び込んだ瞬間のようだったり、ロケットが飛び立つ爆音を身体全体で受けとめた時のようだったり、どうしてもわからなかった難問が解けた時のようだったり、最高に美味い焼き芋を味わった時のようだったり......

「あ!」の瞬間は、人により、タイミングにより、さまざまに違うことでしょう。共通するのは、その「あ!」の後、人生のステージが上がるというか、深まるというか、広がるというか、何かが確実に豊かになり、自分という存在が、強化されたように感じます。

そんな「あ!」を探し続け、生み出し続けているのが、アーティストといわれる人々であり、アートという仕事であるのかもしれません。

その作品や出来事から「あ!」を見つけ出すのは、アーティストであろうとなかろうと、その場に立ち会った一人ひとりの感性です。

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肝付町・川上中学校体育館で行われたパフォーマンス

前述したとおり、今年の夏の芸術祭は9市町の27会場に広がり、たくさんの「あ!」が生まれたのか否か、はっきりとは確かめるすべはありませんが、参加されたみなさん一人ひとりが、何か新しい感覚をつかむきっかけになったり、刺激を受けて「考える」きっかけになったり、楽しい出会いにつながる時間になってくれたようで、本当によかったです。

ほぼ、全イベントに立ち会った私自身も、本当にたくさんのことを考え、感じ、そしてたくさんの素敵な出会いをいただきました。

「面白い!」といって、わざわざお休みをとって複数会場、観に来てくださった方、伊佐、霧島、大隅半島と追っかけ行脚してくださった方、忙しい時期にお手伝いくださった方、本当にありがとうございました。

ゲストアーティストのみなさんにも、芸術祭の基本理念をそれぞれ真剣に考えてもらい、パフォーマンス、展示、ワークショップなどに反映してくださいました。アートと地域、アートと社会、イベントの超人的な忙しさのなかでも、普段はなかなかできない深い会話ができた実り豊かな時間もありました。本当にありがとうございました。

こうした宝物を、自分だけで独占せずに、未来を担う次世代に伝え遺すべく、次なる展開を考えていきたいと思っています。

ご参加、ご支援くださったみなさま、本当にありがとうございました。

また来年も、夏休みの時期に開催し、都市部の学生さんやご家族での参加を呼びかけていきたいと思っています。これからもどうぞ、よろしくお願い申し上げます。


※芸術祭スタッフ募集中!詳しくは、info@2ndhometown.netまでお問い合わせください。


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