本コーナーではコラムをはじめとして、きもつきを題材としたさまざまな読み物を用意しました。どうぞじっくり、ゆったりお楽しみください。
コラム(アーカイブ)
本当の幸せってどこにあるの?
2012.12.10(月曜日)    畠中親德(はたなか ちかのり)
これからお話するのは、大きな悲しみを背負わされた、ある一人の女性の物語です。
 
その女性は、2人の娘を連れて離婚した後、長年の悲しみを経てようやく心の通じ合うパートナーに出会い、新たな結婚生活をスタートさせました。ところが、そうした幸せもつかの間、新しい夫との間にできた子どもは障がいを持って生まれてきました。
 
「どうして、神さまは私にだけ悲しみをくださるのでしょうか。辛い思いをして、やっと立ちあがってきたというのに」
 
そう嘆く彼女を救ってくれたのは、彼の心の豊かさでした。
 
子どもが教えてくれた家族の絆
 
実は、その子が障がいを持ってこの世に生まれてくる可能性があることを彼女は病院の医師から聞かされていました。そのことを夫に相談すると夫は「(この子は)7ヶ月間、なんとか生きようとしているのだから、この世に出してやろうよ」といって、産むことを促してくれたといいます。
 
「だったら産んでみよう」
 
そう決心したものの、実際に障がい児の親になってみると、その現実はあまりに苦しくて、悔しくて、悲しくて......そんなとき救いとなったのが、再び、彼の口から出てきた次の言葉でした。
 
「この子を授かったからこそ、本当に生きるということの尊さや家族の絆というものを教えてもらえるんだよ」
 
その言葉を聞いて、そして保育器の中で必死に生きようとしている子の姿を見て、彼女は、その子から逃げようとしていた自分のおろかさに気づかされたといいます。
 
それから一年が経ち、私のもとにお葬式の依頼がきました。必死の看病も実らず、赤ちゃんはご浄土へと帰っていったのです。
 
でも、間もなくして、その悲しみを喜びに変える出来事が彼女に訪れました。
 
わが子の死で悲しみにくれていたとき、彼女のお腹に新しい命が誕生したのです。生まれてきたのは健康な男の子です。悲しみが続いた家族に新たな光が差し込んできました。
 
みんなは、その子が亡くなった赤ちゃんの生まれかわりだと信じて疑いませんでした。
 
足元にあったたくさんの幸せ
 
ようやく幸せが彼女のドアをノックしたかな――そう思われた矢先、今度は彼女自身が医師に呼び出されてしまいました。ガンに侵されていたのです。唐突な宣告に彼女は「どうして私だけが」と、自分の運命を呪いました。
 
治療のため入院を余儀なくされた彼女は夫に相談しました。
 
「赤ちゃんの世話はあなたにお願いするとして、2人の娘は実家の母にあずけましょう」
 
すると、夫が答えました。
 
「何をいっているんだよ。2人とも俺たちの娘じゃないか。俺たち、家族だよ。俺がお前の留守の間、4人で暮らすよ」
 
その言葉を聞いて、彼女の目から涙があふれ出てきました。
 
そして気づきました。
 
「私は『自分だけがどうして』っていつも思っていたけど、ふと、立ち止まって見まわすと、幸せで満ち満ちていたんです」
 
ひと月あまりの入院生活を終えて彼女が家に帰ると、娘たちが夫と楽しそうに語らっています。
 
そして帰ってきたばかりの彼女に夫がいいました。
 
「お前の病のおかげで、俺たちは本当の親子になれたよ」
 
彼女は本当に驚いたといいます。あれほど憎いと思っていた病が彼女に幸せを教えてくれたのですから。
 
信じる力が幸せをもたらす
 
彼女からこの話を聞いたとき、ふと、筋ジストロフィーという難病に侵され、いつも死と隣り合わせに生きている、ある中学生のことが思い出されました。その中学生がある交流会の席で次のように話してくれたのです。
 
「あなたたちから見たら私たちは不幸に見えることでしょう。でも、わたしたちは不運だと思ったことはあっても、不幸だと思ったことはありません。朝、目がさめて朝の陽射しを浴びたとき、いのちのきらめきを感じます。まだ生きていると感じるのです。そのときに幸せだなと思うのです」
 
 
小児精神科医の佐々木正美さんが次のようにおっしゃっています。
 
「人間の幸福というのは、人を信じる力がある、あるいは信じられる人を持っていることだと思います」
 
 
この話に通じることですが、彼女はきっと「信じる」ものを見つけ、それを確信できたのだなと私は思いました。
 
ずっと、信じるものが見えなかったがために、自分だけが不幸だと思っていたのです。でも、一見不幸と思える出来事を通じて、信じるものが見えてきたのです。いのちのきらめきを感じて、気がつけばすぐそこに幸せがあったとうなずくことができたのです。
 
 
先日、久しぶりに彼女と話をしました。
 
「まだまだ山あり、谷ありの人生ですけれど、悩みながら生きています」と近況を伝えてくれる彼女の顔には笑みが浮かんでいました。
 
彼女なりの幸せへの切符をつかんだな――彼女の表情から私はそう確信したのでした。
 
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信じる力があれば明日はきっといい日になるさ!(肝属平野に落ちる夕日)
 

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