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きもつきレポート
鎌倉・建長寺訪問記 その2
2013.05.22(水曜日)     きもつき情報局
2日目 5月9日午前

当然のことながら、お寺の一日は早く始まります。

朝のお勤めが一日のスタート

初日の夜、12時近くまで建長寺ブランドのお酒「巨福(こふく)」をたっぷり飲みながら話し込んだにもかかわらず、朝の5時半ごろにはほぼ全員が起床して顔を洗った後は、それぞれにお寺でのさわやかな朝を味わっているようです。

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宿舎の2階から庭園を望む


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荘厳で落ち着いた風情の方丈の屋根

6時前には1階に下りて、宿舎となっている建物に隣接した方丈(龍王殿)に行ってみました。6時半からは朝のお勤めがありますが、さすがにまだだれも来ていません。

中に入ってみると、大広間の手前にはいくつかの長椅子が置かれ、中央には管長が座すると見られる大きな座布団があるほか、読経に必要な木魚や大きな太鼓も部屋の片隅に見えます。

特に目を引くのが、中央のふすまに描かれた大きな龍の絵です。墨絵で描かれたその龍はエネルギーに満ちあふれ、生き生きとした表情で人の心に迫ってきます。どういうわけか頭に「喝」の一文字が浮かんできました。かっと目を見開いたその龍が、多少寝ぼけ眼の侵入者に「おい起きろ!」と喝を入れているかのようです。

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パワフルながらも少しユーモラスな表情をした龍

今度は部屋を出て、外に設けられた板張りの廊下に出てみると、建物の後ろには美しい庭園が広がっています。

角に立てられた看板には、庭園が蘭渓道隆の時代からあったとの説明書きがあります。背景の新緑と池の水がすばらしい調和を醸しだしており、すがすがしい気分にしてくれます。

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蘸碧(さんぺき)池を中心とした美しい庭園のパノラマ

そうこうしているうちに朝のお勤めが始まる6時半を迎えました。訪問団の一行は方丈の中の長椅子に腰掛けています。高井総長をはじめとして数名の雲水が部屋に入って来ました。

すると部屋の隅に置かれた大太鼓を雲水の一人がたたき始めました。

ドン、ドン、ドド、ドーン

管長を呼ぶ合図です。

その太鼓の音に合わせて管長が雲水らに付き添われてやってきました。管長が中央にやってくるとすぐに、全員で読経が始まります。読むのは般若心経です。事前に説明されたとおり、長椅子に腰掛けた訪問団の一行も寺側からもらい受けた経本を手に持ち、読経に加わります。

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般若心経を唱える訪問団のメンバー

ときおり、高井総長からは「背筋をまっすぐに伸ばしてください」という指示がでます。朝が早いせいか、あるいは多少の緊張があるせいか、腰を伸ばすと少し痛い感じがします。

読経が終わると今度は吉田管長から短い説法がありました。

この日の朝の話の内容は「空」「無」ということについてです。管長の説法を聴くのはこれが初めてで、しかも早朝だったのでどの程度正確に理解できたかはわかりませんが、管長がメンバーに伝えようとしたことは「悩みや欲をその都度、断ち切っていくことの大切さ」と「人間同士で助けあっていくことの大切さ」でした。つまり「無」とは「一時的な感情や欲望にとらわれない心」といえばいいのでしょうか。

訪問団のメンバーは、普段はなかなか聴くことのできない吉田管長の説法に熱心に耳を傾け、管長の一言ひとことを心に焼き付けているかのようでした。

食べることも修行のひとつ

さて、朝のお勤めの次は朝食です。

といっても、お寺での朝食はいろいろな意味で普通のものとはかなり異なります。以前にお伝えしましたとおり、お寺での生活はすべてが修行であり、この朝食も立派な修行の一環としてあります。

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こちらが朝食

指導するのは高井総長です。まず初めにいくつかのお経を読んでいくのですが、その一つひとつについて総長が丁寧に説明を加えていきます。また、食事のマナーに関する細かい指示も出されます。

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朝食の前にも読経があります

たとえば、「食事中は食事に集中するため人と話さない」「食べるときは器をすべて手にとって食べる」「たくあんの最後の一切れはとっておいて、食器に白湯を注いでもらった後に最後はそれで食器をふいて出す」などといった指示です。

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ここでは音をたてずに黙々と食べるのが正しいマナー

中でも大事なことは、人間が他の生命をいただきながら生かされていることを自覚することだと高井総長は強調します。普段、無自覚に食べている多くの人にとっては、食の大切さを改めて認識するとてもいい機会です。

実際、肝付町から参加していた福田陽一さんは「食事も含めて、自分の生き方を見なおさないといけませんね」と今回の「修行」の意義を強く感じている様子です。

「身内」としての扱いに感動

食事が終わると少し休憩時間があり、8時半からは建長寺の職員による朝礼に参加することになりました。

今回の訪問でだれもが抱いたのが、吉田管長が訪問団のメンバーを「身内」として受け入れてくれているという実感です。普通の人が入れない場所に入れてもらったり、普通は見ることのできないものを見せてもらったり、この朝礼に参加することにしても普通は考えられません。

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向こう側に陣取るのがお寺の職員さんたち

朝礼では高井総長からその日の活動について説明があったほか、スタッフによる情報提供や確認作業がありました。その場にいることで、なんだか私たちも建長寺の一員になったような気分です。一同、それを可能にしてくれた吉田管長の配慮に改めて感謝の念を抱くのでした。

しばらく休憩した後、いよいよ境内の見学がスタートしました。案内役を務めるのは法務部の鈴木浄雲さんです。

まず初めに法堂(はっとう)と呼ばれる建物を訪れ、そこに安置された千手観音や天井に描かれた雲龍図を見学。それに続いて建長寺の本尊である地蔵菩薩が安置された仏殿を訪れ、鈴木さんの説明にメンバーは耳を傾けました。

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法堂で説明する鈴木さん(中央奥)

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天井に描かれた雲龍図

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仏殿に安置された地蔵菩薩

次に訪れた三門では、文字通り特別扱いの体験をすることになりました。

その特別扱いとは、一般の人が入れない三門の内部に入り、上階部分にある数々の仏像(銅造の五百羅漢像など)を見学させてもらったほか、まわり廊下を歩いてそこからの眺めを楽しむことができたことです。

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かなり急な上り階段です

ときどき門の下をくぐるほかの観光客からは「私たちは入れないんですか」という問いかけが見張り役のスタッフに投げかけられます。それを聞いていると、一般客に少々悪いなという気持ちがわく一方で、自分たちが特別扱いされていることを実感します。本当にありがたいことです。

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三門の内部で鈴木さんの説明を聞く訪問団のメンバー

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五百羅漢像

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三門のまわり廊下からの眺め

次に向かったのは蘭渓道隆の墓所を含むいくつかの建物からなる西来庵(せいらいあん)と呼ばれる区域です。その一角に建つ国の重要文化財に指定されている昭堂(しょうどう)の中に入ると、中央を取り囲むように畳が敷かれており、そこで雲水たちが坐禅を組んで修行することなどが鈴木さんより説明されました。

※通常は同じ敷地内の大徹堂(坐禅堂)が坐禅の場所なのですが、現在工事中で使えないため昭堂が仮の坐禅道場になっているとの説明でした。

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昭堂

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この畳一畳分が雲水にとっての修業の場

その説明を聞いている途中でした。西来庵の入口のほうから吉田管長と福谷さんがやってきて昭堂の中に入り、管長から説明が少しあった後、今度はその奥にある建物の中に通されることになりました。

実はその建物こそが蘭渓道隆を祀(まつ)る開山堂でした。通された部屋は比較的狭く、全員で入るのは少し窮屈な気がしましたが、中央に鎮座する蘭渓道隆の木造の坐像を拝ませてもらえたのには一同感激しきりでした。

厳しい視線で前をしっかり見据える蘭渓道隆の像からは威厳と厳格さが伝わってきます。

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開山堂にて蘭渓道隆の坐像と対面

さらに、びっくりするとともにうれしいことがありました。

木像の前に置かれたお供え物の一つが、メンバーのひとりがおみやげとして持ってきていたお団子だったからです。それは昨年(2012年)12月に吉田管長が道隆寺を参拝した後、福谷さんの実家で地元の人たちといっしょにお茶を飲み、手づくりの料理を味わった際に出されていたお団子でした。

管長はその団子を気に入り、つくり手の名前をとって「ヒナちゃん団子」と命名したくらいです。その団子が蘭渓道隆の木像の前に置かれていたのです。そういうところにも管長の心にくいばかりの気配りが感じられるのでした。

その3に続く

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